鶴書房盛光社のこのシリーズは、「日本のSF作家だけの最新作をあつめた」※シリーズで、何冊かはNHK往年の名ドラマ「少年ドラマシリーズ」の原作である。
本シリーズは初期には「ジュニアSFシリーズ」として10巻、後には「SFベストセラーズ」として20巻以上に拡張されたジュブナイル小説集だ。
シリーズに収録された作者は光瀬龍、筒井康隆、眉村卓、豊田有恒、小松左京等々、当時の第一流作家が勢ぞろいした観がある。企画には、S.Fマガジン編集部長を務めた福島正美氏が係わっているようで、
このような豪華執筆陣も頷けるのである。また、各巻末には「SF入門」と題する、同氏による年少者向けのSF啓蒙を目的とした小文が収録されていて、楽しい。
シリーズ各作品とも、今読み返すと、全く肩が凝らず気楽に読み進めることができ、読後感の爽快な結末が多い。現代の少年・少女にもSFの楽しみを十分味わってもらえると思うが、多くが絶版となっているのは寂しいことだ。
ここでは、同シリーズから何点かを紹介させていただく。
なお、本シリーズの多くの表紙と小説概要が、
HP「早川のホームページ」上の、早川氏のコレクションにより紹介されている。
※シリーズ前書きによる。
夕映え作戦
なぞの転校生
人類のあけぼの号 内田 庶(うちだ ちかし) 初出1967 盛光堂ジュニアSF
ロボット3原則を厳守するはずのロボットが殺人!設計者の主人公は父殺しの犯人とされたまま冷凍睡眠に陥り、50年後の世界で目覚める。
トリックの面白さと、各所にちりばめられた少年少女への肯定的なメッセージにも共感する。
題名の「人類のあけぼの号」は、主人公が開発したお手伝いロボットの名称で、高性能ロボットと人類のワークシェアリングの問題も提起されているが、書中では肯定的に扱われている。
本書の道具立てである「お手伝いロボット、コールドスリープ、タイムマシンによる帰還」は、
すぐに1956年発表のハインライン「夏への扉」を思い起こす。それもそのはずで、著者は55年まで早川書房編集者、
しかもポケットミステリの企画者だ。著者は「夏への扉」の道具立てはそのままに、お手の物のミステリーの要素を加え、読後感の爽やかな作品に仕上げている。
この作品は著者のハインラインへのオマージュなのかも知れない。現代の少年少女にも読んで欲しい1作だ。
続・時をかける少女